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「おはようっ!」
チュンチュンと囀る鳥の鳴き声より先に。
キラリと眩しい窓から差し込む朝日より先に。
朝だというのに妙にテンションの高い声と。
何も企んでないかの如くな、けれどやはり何かを企んでそうな満面の笑みと。
亜梨沙のそれが、僕の耳に目に届いた。
まだ全く働いていない頭を必死に動かして、とりあえず時計をみようと動く。
「8時45分だよ。寝すぎ!
はい、起きるっ!」
先に時刻をつげられ、仕舞いには上半身を起こされた。
重い目を擦り、重い体を動かす。
眼鏡をかけようと枕元をまさぐるけれど………
「ん……めがね…」
ない。
眼鏡がないと1㍍先も見えない。『ない』じゃあシャレにもならないぞ。
「あ、眼鏡探してるの?亜梨沙が預かってるよん。
亜梨沙が洗面所まで連れてったげる!」
グイと手を引かれ、体がグラリと傾く。
「ちょ、危ないから眼鏡返して」
「だめーっ。大丈夫、亜梨沙に任せて!」
キツく言った(つもり)のに、軽く流されてしまった。
兄の威厳は何処に………
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