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「……はぁ、」
ため息をつくと幸せが逃げると言うが、朝起きてからこれが何回目のため息だろうか。
その分幸せも逃げて行ってるんだろうか。
けれどもいくら幸せが逃げようとも、 憂鬱でならないこの学校迄の道のりでは、やはりため息しか出ない。
結局いくら考えてもイメチェンの適当な言い訳は思い浮かばないまま、月曜日を迎えてしまった。
朝から張り切る亜梨沙は嬉しそうに僕の髪をワックスで束ねてくれて、土曜日となんら変わらない髪型が出来上がった。
……校則はそこまで厳しいわけではないが、地味で真面目だった僕がいきなりこんな髪の色になってしまったら何を言われるか…。
かと言って、良かれと思ってしてくれた亜梨沙の手前、黒染めする事も出来なかった。
「はあぁ…」
なんだか心臓が痛い。
深いため息をつきながら、やっとの思いで着いた駅には、いつもの待ち合わせ場所に和がたっている。
重い足取りで近づき、
「…おはよう、」
和に話しかけると、和は首を傾げた。
「…ょぅ、ございます…?」
超『他人行儀』。
そしてその和の目は、知らない人を見る目だった。
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