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「おはよう」
「ほあよー」
次の日。
いつもの待ち合わせ場所に先に着いていた和は、眠そうに欠伸をする。
それにつられて僕も欠伸が出た。
「…うつった」
「欠伸ってうつるよな。あれ、何でなんだろ」
「不思議だよね」
取り留めのない話しをしながら、電車に揺られる。
今日も「そろそろお兄も仕方覚えて自分でしなよ」と小言を言いながら亜梨沙が念入りにセットをしてくれたおかげで、完璧な髪型が出来上がった。
眉間に伸びるワックスで束ねられた前髪がやはり気になる。
「その頭ってさ、自分でセットしてんの?」
クリクリとそれを指で摘んでいると、和は自分の鼻を触りながら聞いてきた。
……和とは中学の時からの付き合いで。
和が鼻を触るのは…動揺してる時や不安、嫌な事があった時等に出る癖だ。
「いや、亜梨沙が毎朝楽しそうにしてる…オモチャ状態だよ」
何故今動揺しているのかは解らないけれど、取り敢えず本当の事を答えた。
不安を取り除くように、心底呆れてるよというのを全身にだしながら。
「そっか、悠介も大変だなぁ~」
すると和は安心したようにニヘッと笑って、僕の背中をドシドシと叩いた。
……多分、僕が自分でセットしていたとしたら、自分とは違う人種になってしまったと思ったのかもしれない。
今まで、そういう人達は違う人種だと思ってたから…
けど、僕は僕だよ。
何も変わってない。
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