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「たしかに上様はそう仰って下さったわ。でもいくらなんでも休みすぎよ!もう今日だけで5回も茶屋に寄ってるじゃない!!」
普段は花や木々が好きな女、雪子もこの時ばかりは周りの風景など目に止まらなかった。
「雪子、そんなに怒るな。せっかくの美人が台無しだ。それにこの春の陽気に、その怒鳴り声はふさわしくない…」
男は辺り一面を見渡す。
川沿いにある茶屋の周りの野原には黄色い花が咲き、川では近所の子供達が魚獲りに興じていた。
「ふさわしいとかふさわしくないとかどーでもいいの!!早く行くよ!!江戸まであと少しなんだから!!!」
涼やかな顔で串に刺さった団子を味わう男の着物の袖を引っ張る。
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