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全速力でバイクを走らせ目的地に着く、入り口に向かうと白衣を纏った婦人が立っている
「長曽我部さん、ですね?」
「…はい」
「案内します。……先程も言いましたが…貴方の気持ち次第である程度覚悟しなきゃいけないですよ?」
***
桜がいるであろう305号室の前に立ち中に入ればカーテンで桜は確認できないが桜の母さんおふくろと目が合った。そして耳に届く元親の予想を遥かに越えるほど明るい声
「元親…」
「来たのね元親くん…」
俺の顔を見るなりいきなり暗い顔になる二人、横目を動かせば担当医は病室の入り口、つまり俺の背後でじっと待っているのを確認した
『あれ、誰か来たの?お母さん』
いつもの声が聞こえた。安心してカーテン越しの相手を確認しようとベッドに近付く
「何だよ、病院に運ばれたとか聞いたからどんだけ心配したと思…っ」
『貴方もお見舞いに来てくれたんですか?』
「……は?」
ニコッと笑い首をかしげる相手にしかめっ面をする元親
『だって入院している私のところに来てくれたって事はそうですよね?』
見た目怖いからビックリしたけどいい人ですね、とまた笑う桜に呆然としてしまう元親
「………………なぁ
俺のこと、分かるか?」
『えっと……初対面、ですよね…?あ…っもし会った事あるならごめんなさいっ!!』
恐る恐る告げてくる桜、それを聞いた俺は一気に絶望という言葉の冷たい冷たい沼に引きずりこまれた
同時に何かが自分の中で沸き上がる
「おま…っふざけてんのかっ!?冗談なら…っ!!」
「長曽我部さんっ!!!」
桜の肩を揺すり訴えかける俺を我に返らせるように声を張って呼び掛ける担当医に案の定、我に返った俺は手を離す
もちろん桜はというと何がなんだか分からない、怯えたように見てくる。……まるで俺が誰だか分からず、なぜ自分が肩を揺すられ責められているのを理解していない…こんな感じだ
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