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「あーっ、これ! おーいっ、由美子!」
孝夫の声がリビングに響いた。
「買ってくれたのか!」
夫は今頃になって、やっと気付いたらしい……サイドボードに置いた新型のラジコンヘリコプターに。
「パパーっ、ボノロン読んで」
「おっ、わかったよ。ゆみちゃん、ちょっとだけ待って」
由美子がリビングに入ると、孝夫は優美を抱きかかえながらラジコンヘリの箱に触っていた。
「由美子、どうして買ってくれたの?」
「あなたが、昇格するらしいと聞かされたからよ。あなたが頑張って階段をひとつ登った、そのご褒美よ」
「聞かされたって……誰に? 俺は今日、辞令があるまで、そのことを知らなかったんだよ?」
孝夫は、そのことが如何にも解せない様子で問い直した。
「社宅の課長の奥さんと部長夫人によ。女の情報網よ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その一週間後に、今度は由美子が声を上げた。
アンシュレーのドレッサーが届いたからだ。
娘の昼寝の時間。午後のティータイムに紅茶を淹れたばかりのことだった。思わず上げた声で優美を起こしてしまった。
孝夫は覚えていてくれたのだ。
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