時計

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「おーい、由美子。これ見てみろ」  孝夫が、時計売り場で呼び止めた。  由美子が振り返ると、孝夫がにこにこしながら手招きしている。 「あらまっ、なにこれ! おもしろーい」  その売り場の陳列棚には、様々な凝ったデザインの置き時計が並んでいたが、孝夫の興味を引いたのは、目の形をした掛け時計だった。 「なんて書いてあるんだろ?」  太い柱に掛けられた、その時計の下の説明書きには考案者の名前が記されているようなのだが、小さな文字で読み取れない。  つまりは、デザイナーズブランドと呼ばれる高級品らしい。 「お目が高いですね」  そう言いながら柱の陰から、中年の係員が現れた。 「はっ?」 「こんにちは。いいでしょう。これは、ネルソンがデザインした人気商品なんですよ」 「へーっ、これ、人気があるんですか。うん、そうでしょうね。突拍子もないデザインですもんね。よく、こんなもの思いつくなあ」 「あなた!」  余計な事を言わないようにと由美子が孝夫の背中をつついたが、彼は気づかないらしい。 「えーと、カーネルさんでしたっけ?」
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