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ドレッサーは持っている。独身時代に購入した小ぶりなものだが、気に入っている。大事にして来たので目立った傷もついてはいない。引き出しの不具合もない。二つは必要のないものだ。
このドレッサーを見るさっきまでは、そう思っていた。
ANNSLEGH(アンシュレー)の高級三面収納ドレッサー/ナラ材/シタン色
定価260400円→182000円(税込み)と表示されたそれは、由美子の心を捉えた。
鏡の輝きが違う!
自宅にあるものは傷こそ無いものの鏡面がくすんで来ていることに、このドレッサーと比較して気づかされたのだ。
ドレッサーは一万円以下の簡素な物からハイソ向け超高級品までピンキリだ。
隣りにはNOTE(ノート)のチェスト付きのセット商品。定価321300円→151600円もある。
だが、由美子はアンシュレーのドレッサーが気に入ってしまった。
虜(とりこ)になるとは、こういうことなのだろう。
色、風合い、使い勝手、セットになっている椅子のデザインまでの全てが、由美子の感性に訴えかけていた。
由美子は、孝夫がラジコンヘリの虜になっている感覚が少し解ったように思えた。
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