WARM・UP

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隼人に背を向け、月斗はコートに向かう。 「とにかく、これ以上足手纏いは「好き勝手言いやがって!」 真陽がキレた。 素早い動きで、後ろから月斗のボールを奪う。 その出来事に、夕陽を除く部員は驚愕。 月斗はチーム随一のキープ力を持っている。 不意討ちとはいえ、簡単にボールを奪う事はなかなか無い。 「ちっ」 舌打ちをした月斗は真陽を見る。 既に真陽は直線上にあるリング目がけて走りだしていた。 「速っ!」 双弍がつい漏らす。 「舐めんなよ!」 月斗も持ち前の速さで、真陽を追い掛ける。 後ろ姿から、真陽とは気付いていない。 「キャプテンのが速いっ!」 双弌の声通り、月斗は真陽に直ぐ追い付いた。 ドリブルに対して、下から掬うようにカットする。 「北谷カット」月斗の得意技だ。 「貰った」 と、確信したが、月斗の手にボールは当たらなかった。 バックチェンジ。 なんの工夫もない、基本の様な技法。 しかし、見えない相手に合わせ、それも恐ろしい程丁寧だった。 事後硬直で、動けない月斗を置き去りにして真陽は駆け抜け、飛翔。 その高さは、正に飛んでいるようだった。 「鬼さん、あんなダンク出来る?」 「…無理」 双弌の問い掛けにそう答える。 バスケ部、バレー部の動きが止まった。 そんな中、梨歩は気付いた。 「…バカ」 四年間待った人が、やっと来た。 兄は何故気付かないのか。 「よかった…」
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