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―屋上―
「いち・に・さん・し!」
生徒達の掛け声が聞こえる。
ここ、南北(なんきた)高校のグラウンドでは、現在体育の授業が行われていた。
「つまんね」
その声を聞きながら背伸びをする青年は、授業中にも関わらず、屋上で寝転んでいた。
彼の名前は神谷真陽(かみやまさひ)。
190㎝の身長と、顔の端麗さで色々な人間から一目置かれている、南北高校の2年生である。
「一寝入りするかな」
真陽は目を閉じて、生徒の声を子守唄に夢の世界に入っていった。
つもりだった、が。
「やっぱりここにいた…」
抑揚のあまり無い声と共に現れたのは、背の低い少女。
南北高校の制服を着た少女は、ゆっくり真陽に歩み寄る。
「起きて…!」
穏やかな寝息をたてている真陽の腹部に、ジャンピングエルボーを放つ。
「グボォ!!」
不可解な声を出した真陽は、腹部を押さえて悶えた。
「ぐおぉぉ…、梨歩、授業中だぞ…?」
梨歩(りほ)と呼ばれた少女は、真陽に乗ったまま答える。
「真陽だって、サボってる…流石先生に探してこいって言われたから」
真陽はため息を吐き出し、梨歩を立たせると、自分も立ち上がる。
「…学年が違う梨歩に探させるかね、フツー…」
彼女は若津梨歩。
南北高校の1年生で、真陽の幼なじみになる。
1年生である梨歩が、何故2年生である真陽を探しに来たのか。
「ま、急げって事かね…」
これは、暗に「梨歩を道連れにしたくないなら、さっさと戻れ」ということだろう。
「梨歩、直ぐに教室に行こうか」
梨歩は無言で頷いて、真陽に着いて歩きだした。
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