19人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、いい加減に起きろ」
声を掛けられて、目を覚ます。
「あ~、先生、授業終わった?」
「…もうホームルームまで終わった」
隼人は呆れた様子で真陽に言った。
「流石に寝すぎたかなぁ」
「学校舐めてんのかコラ」
若干の怒気を含ませた隼人は、真陽の前の席に座ると向かい合った。
「もう、一年経ったぞ」
「またその話ですか?」
真陽はうんざりした様子で隼人に答える。
外からは、部活生の声が聞こえてくる。
「もうとっくに脚は治ってるんだろ?」
「…おかげさまで」
真陽がズボンの裾を捲ると、足首に3㎝程の切り傷が見えた。
「痛みは?」
「大丈夫だよ…雨の日は痛いけど」
隼人は、そうか、と呟くと、真剣な眼をした。
「月斗は待っているぞ?無論、俺も梨歩ちゃんも」
「教員が生徒をちゃん付けすんなって」
真陽は笑いながら話を逸らそうとする。
が、隼人はそれを許さなかった。
「月斗達は知らないかもしれないが、社会人チームでは随分暴れてるみたいだな」
「先生も人が悪いな」
真陽は、ため息をつく。
「ちゃんと考えろ。梨歩ちゃんとの約束もあるんだろ?」
隼人はそれだけ言うと、机の上にA4サイズの紙を置いた。
「じゃ、また明日な」
教室を出た隼人は、そのまま職員室に歩いていった。
「約束ったって…なぁ」
真陽はA4の紙を取る。
そこには、真陽の名前と隼人のサインと共に「入部届け」と記されていた。
「用意周到だこって」
紙を折り畳んで鞄にしまうと、真陽も無人の教室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!