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ダム…ダム…
体育館にボールが弾む音が響く。
バッシュに練習着の男は、感触を確かめるように、ゆっくりとドリブルをしながら、コートの中を歩く。
ダム…ダム…
キキュッ!
スリーポイントラインにさしかかったとき、バッシュのスキール音と、ドリブルの「質」が変わる音がした。
急激に姿勢が低くなった男は、一瞬にしてペイントエリア内に移動した。
ダン!
がシャン!
踏み切り音がした後、ボールがリングに叩きつけられる音がした。
「ふぅ…」
ダンクした彼、真陽は膝に手をついてため息をついた。
「調子はどう?」
声がした方を見ると、フロアの入り口に男が立っていた。
「まぁまぁ、かな」
「まぁまぁでダンクなんてされたら僕の面目ないよ」
「バカ、サイズが違うわ」
真陽の顔を幼くしたような顔立ちの少年は、歩いて真陽の方へ歩いてくる。
「夕陽、部活は?」
「兄さんがいないから帰って来ちゃった」
真陽の方から転がってきたボールを拾った正真正銘、真陽の弟である夕陽は、スリーポイントラインの2メートル後ろからシュートを放つ。
完璧とも言えるシュートフォームから放たれたボールは、何にも当たる事無くゴールの中心を射ぬいた。
「おいおい…」
一つ年下の夕陽は、なかなかのブラコンである。
「足首の調子は?」
「さっき言ったろ?まぁまぁだ」
サポーターを着けた足首を擦りながら、真陽は言った。
「良かった…ねぇ、一対一、しようよ」
「あぁ?!…ったく、4本だけな」
真陽は、呆れながらボールを夕陽に投げ渡した。
「手加減してね、兄さん」
「…バカ言ってんじゃねぇよ」
二人限りの体育館に、楽しげな声とドリブルの音が聞こえた。
「ファウルだよ!」
「この位じゃ(笛は)鳴らねぇよ!」
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