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「あーあ、びしょびしょじゃん!また舞姉ちゃん怒らせたんだ」
そう言って笑いながら一人の子供が歩いてきた。
いや、歩いてというのは語弊がある。電動の車椅子に乗って近づいてきたと言った方がいいだろう
年は10歳くらいだろうか 見た目は大人しそうで いかにも病弱とでも言えるような それでいて雰囲気は決してそれを感じさせないほどの少年だ。
「よお、昭義!いや~急に舞が水ぶちまけやがってねぇ・・・俺はただここに腰掛けて、目をつむって、うつらうつらしながらとある世界に旅立とうとしてただけなのに・・・」
「それを寝てるって言うんじゃないの?世間一般は」
昭義はそう言って笑った。
昭義は元から車椅子生活を余儀なくされた訳ではない。
半年前に交通事故に遭い 現在は歩く事すら困難なのだ。
立つことくらいはできるが、とても一人で歩く事はまだ出来ない。
手術は成功し、もうすぐ歩けるようになるらしいのだが、一向にその気配は無い
「うっせぇよ!とにかく俺は寝てない!!てか昭義・・・どうしたんだ?こんな朝早くから」
「・・・ちょっとね」
「・・・?なんだよ?あ!分かった!!彼女か?彼女とデートか?お前も隅に置けんなおい!」
「違うって!あ、そろそろ行かなきゃ!!バイバーイ!瞬兄ちゃん!!」
「おう!!頑張れyおわああああ!!」
そう言って瞬は倒れ込んだ。
無理も無い、またも2階から大量の水が降ってきたからだ
「掃除しろって言ってんだろがこのなまぐさ野郎があああああ!!」
早朝の町に舞の怒号が響き渡った・・・
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