バトゥー来校

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 1年生のころのある日の朝、同級生のルルッカとパソソと一緒に登校してきたサザッテの下足箱の中に、手紙が入っていた。律儀に白い封筒に入れられた手紙の主は、なんとバトゥー・イッピケであった。なんとなくその場で開けてみると、封筒の中には1枚の便箋に「付き合ってください」と、一言だけ書かれていた。あの地味で唐変木そうなバトゥーからの恋文に、言語に絶する気持ち悪さを感じた彼女は、それを4つに破いて投げ捨ててしまった。  居合わせたルルッカとパソソも、その手紙を見てしまったのだが、まさかあのバトゥーがサザッテと本気で付き合おうとしていたなどとは、誰にも考えられないことであった。サザッテにしてみれば、あんな男が自分と付き合えるものだと、そこまで自信があったのなら勘違いもいいところだと、バトゥーを哀れに思った。また、直接話すわけでもなく(実際バトゥーとサザッテは、2、3回事務的な会話しただけだったのだが)手紙で愛の告白をするなど、古風でなんとも格好の悪い手段を取ったものだと思い、呆れ果てた。  ちなみに、これはサザッテも誰も知らないことだが、登校拒否する前日の放課後に、バトゥーは破かれて汚れたその手紙が、下足箱の最下段に入っているのを見つけたのだ。バトゥーは彼女を恨めしく思った。そしてサザッテと顔を合わせるのが辛くなり、家に引き籠るようになった。「いじめ」ではなく「失恋」が、彼の本当の登校拒否の原因だったのである。
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