豹変

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 この事件が起きてから、バトゥー・イッピケの異常な行動が目立つようになる。「歴史」や「倫理」の授業中、バトゥーは教師たちに質問を投げかけた。普段何を考えているのか分からないくらい挙動不審で、話しても口籠ってしまうバトゥーなのだが、なぜか歴史に関することやガラン教についての話になると、人が変わった様に毅然とした態度で話すため、生徒たちは驚いた。だが、バトゥーの口からは「ガラン教成立以前に、マウンダンや生命の境地について説いた宗教はあったのか」とか、「ハーカーフーカーヘーターエータの扉について、ガラン教の聖典『ウシッグズンバ』で説かれていないが、これは聖典として有用なのか」とか、とにかくガラン教の聖職者や宗教学者でない限りと答えられないような難問ばかりぶつけるので、教師が閉口頓首してしまう。その間にバトゥーの演説にも似た質問が繰り返され授業が頓挫してしまうか、話についていけない教師に憤慨したバトゥーが怒り出して勝手に下校してしまうことさえあった。ところが、休み時間やほかの科目の授業になると、バトゥーはいつものようにしどろもどろに話すため、生徒たちはますます彼を奇異な人物として、蔑視するようになった。
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