悪夢

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 ある夜、サザッテ・ウッキンデッケは夢を見た。どこまでも続く漆黒の空と、草原。そこに整然と並べられた無数の古びた机と、その椅子に腰掛けた人々がいる。彼らは何かの数字の羅列をひたすら紙に鉛筆で書いて計算しており、夢の中のサザッテもその一人となり、机の上で計算している。いつの間にか空には、巨大な球体が浮いている。球体は鉄板の切れ端をボルトで幾重にも打ち付けられたような表面を成しており、その鉄板の隙間からぐちゃぐちゃと透明な粘液を出している。――早く、早く計算しなくてはならない。何故かサザッテは圧迫感に襲われながら、急いで計算を続けた。そもそも計算しているのは、何を表す数なのか。いったい、あの球体は何なのか。やがて、球体は急速に落下し始める。落ちれば街一つ、押し潰してしまうほどの大きさだ。しかし、サザッテを含めた机に腰掛けた人々は、一切計算を止めようとはしない。球体の影が彼らを圧殺しようと迫った瞬間、サザッテは突然目を覚ました。彼女はびっしょりと汗をかき、しばらく動悸がおさまらなかった。時計の針は、午前2時半を指していた。あの夢はなんだったのだろうか。思い出すだけで、うなされそうになった。
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