新人類史

2/4
前へ
/34ページ
次へ
 人類の文明は、西暦の25世紀までに生活圏を太陽系全域に拡大し、急激な発展を遂げた。しかし、それは長く続かなかった。地球の資源枯渇の深刻化や植民惑星での災害、労働者の暴動などの事件が頻発し、26世紀末を迎えるころには人類の生活圏は月まで後退してしまった。さらに27世紀になると、人体に悪影響を及ぼす超光速航行の失敗など、科学的な新発見や新技術の開発は次第に数を減らしていった。西暦28世紀ごろからは枯渇しかけた資源を奪い合う壮絶な争いを起こして、その進歩を止めてしまった。更に急激な大陸移動と天変地異が相次ぎ、地球環境は悪化。西暦30世紀を迎えるころには、すべての文明が滅びてしまった。  それから5千年の時が流れた。ユーラシア、オセアニア、アメリカ、アフリカのかつての大陸は、影も残さずに崩壊した。代わりにアッデラ、パンラオ、リグンテ、ミリンメ、オッセデの5つの大陸が、新天地を形成した。僅かに残された資源と地下避難施設に身を寄せて、この激動の時代を過ごした人類が再び息を吹き返したのは、西暦80世紀。原始のころと変わらない生活をしていた人類は、約1億人までその数を減らしていた。彼らは自分たちを新人類「イドゥ」と称し、かつて栄えた旧文明とは異なる言語、未知の思想を作り出していく。やがて300年余りの歴史を経たころには、「イドゥ」の文明は、かつての西暦でいう19世紀頃の水準にまで発展した。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加