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外の廊下を 聞き慣れない足音が 近づいてきた… コツコツ… コツコツ… そして その足音は わが家のドアの前で ピタリと 止んだ… ゴソゴソと ゴソゴソと ドアの向こうで バッグから鍵を探す 音がした… 私は おかしくて クスッと 笑った… ベルを鳴らせば いいのに… これも 成長 なのかな… 私は そんな娘の努力に 手を貸すつもりで ただ ただ 手を貸さずに 鍵を 見つめた… ドアが開くと “ただいま!” と これだけは あの時とおなじ 聞き慣れたトーンが 耳をくすぐった… あとは すべて ちがうけど… 何回言っても いつも潰れていた ローファーの踵… 何色だかわからない 髪の色… あんたピエロ? 似合わなかった お化粧… いま 笑顔で ハイヒールを脱いでいる 黒いスーツの娘は ポニーテールに 薄化粧… あの頃の面影を まったく 感じない… でもそれは 彼女なりに 自分で 線を ひいたのだろう… いとおしく 健気で たまらない…
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