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長い黒髪を靡かせ、真新しいハイヒール特有の足音を響かせて歩いていた。恐らく男性の執筆であろう。
決して上手くはない文字は、彼女にとって新たな物語となる場所を示す、手掛かりとなる手紙。…住所を見ていた所で前方から歩いて来る女性に気付かなかった。
「ごめんなさい…!お怪我はありませんか?」
先に立ち上がり、未だに尻餅を付いていた女性に髪を掻き上げながら手を差し伸べる。女性は苦笑を浮かべながら、その手を借りた。
「本当にごめんなさい、私が余所見をしていたばかりに…」
「いえ、大丈夫です。怪我も無いですし、問題ありません。」
「そう、それなら良かったわ」
女性を瞳に映すと、瓜二つの自分が目の前に。
お互いに目を丸くして、お互いに笑い声を上げる瞬間ですら同じ。何故なら、
「お帰りなさい、」
「ただいま、」
彼女達は双子なのだから、
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