不安(続き)

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脱衣所からのほのかな明かりしか入らない薄闇の中。 まとわり付く泡でお互いの身体は見えない。 ふいに、彼の手が泡の下であたしの胸の突起に触れる。 相変わらず引き込まれそうな色気のある瞳で、彼は真っ直ぐ目を合わせる。 「結衣、チューしよっか」 おへその奥が引っ張られたような感覚がして、クラクラと脳が揺れる。 「うん…したい」 一瞬の後、浴槽に波が立ったかと思うと、彼はあたしに顔を近付けて唇を重ねた。 かすかな音が弾けるような、触れるだけの小さなキス。 それから、じっとあたしを見つめて 深く深く、舌を絡められる。 ああ、なんて 幸せなんだろう……。
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