遠距離と近距離

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「それってもしかして○○って会社?」 「えっなんで知ってんの?」 なんでって… だってその会社は… 愛しいあの人がいる場所。 「あたしもバイトしてたから」 ニコッと笑って、なんでもないことみたいに言った。 たいしたことじゃない偶然みたいに、平然と。 本当は、心臓がドキドキしてる。 何も事情を知らない国分くんを通じて、いま彼がどうしているかとか分かるんじゃないかって。 一瞬でひらめいてしまう自分のしたたかさが、怖い。 彼との間に、わずかな繋がりが戻ってきたようで、それだけで嬉しい。 自分から無理矢理断ち切ったのに、嬉しいなんておかしいかな。 でも、素直な気持ちなんだよ。 会えなくても、触れ合えなくても、彼との距離をほんの少しでも近く感じれることは、嬉しい。 そして喜びのあとにくる、切なさ。 彼とはもう会わないという 現実。
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