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「ただいまぁ~」
アパートの玄関を開けると、シンはテレビを見てくつろいでいた。
「おう、お帰り。
楽しかったか?」
「まぁまぁかな」
無造作にブーツを脱いで、暖房で暖まった部屋に入る。
コートを脱ぎ、ハンガーにかけた。
あたしのお気に入り、クロエのハンガー。
これも、明日持って帰ろう。
「片付け進んでる~?」
「うーん、引っ越しって何回やっても手順が分かんないわ(笑)」
部屋の中には、中途半端に物が詰まった段ボールや、捨てられる服の山が出来上がっていた。
「やっぱ荷造りすると、ちょっと実感沸くねぇ」
積まれた本の表紙を撫でながら、しみじみと思う。
けれど不思議と、寂しいという想いは無かった。
離れたくないなんて思う段階の2人でもないし、浮気はもちろん、お互いの気持ちが冷めるんじゃないかなんて心配も、まるでしていなかった。あたしは。
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