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甘くて低い声。
少し長めの前髪と襟足。
色気のある薄い唇。
脳を痺れさせる、あの甘い香り。
あたしの肩を抱いて、顔を覗き込んでいる。
相変わらず、登場の仕方がカッコ良すぎる。
「にっしー!!」
あたしはおもわず甲高い声を上げた。
男が現れた時のナンパの引きは本当に早い。
気付けばいなくなっていた。
「何あれ?声かけられたん?」
「うん、なんか、待ち合わせー?とか」
「ふーん」
男がいなくなると、すぐに肩から手を離し、座ってタバコに火をつける。
そんなことされると、期待する。
ナンパに見せ付けるために、肩なんて抱いたのかって。
ヤキモチかなって、思っちゃうじゃん。
あたしは初めて彼に抱かれた肩がなんだかくすぐったくて、ひとり頬を緩めた。
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