glancing

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それは中二の秋。 二つ年上のお兄ちゃんが通う高校の文化祭での出来事だった。 そんなに乗り気じゃなかった私は、親友の花梨に引きずられるように高校に足を踏み入れたんだ。 本当はお兄ちゃんの高校の文化祭なんて行く気はなかった。 正直……欝陶しいくらい私にベタベタなお兄ちゃんのトコになんか行きたくなかったから。 それでも。 体育館のステージから漏れ聞こえてきた、その音を聞いた瞬間。 耳が勝手にその音を探して、探って、追いかけてた。 魔法にかけられたみたいに、ふらふらした足取りで、花梨に引きずられるがまま、その音のする方向に向かって歩いて行ってた。 「優愛も絶対気に入るからっ」 嬉しそうに話してた花梨の声は、耳を素通りしてた。 私の耳は、もぉ彼の音に落ちてた。
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