glancing

5/16
704人が本棚に入れています
本棚に追加
/728ページ
曲が終わって。 くせのある黒髪のヴォーカルが、可愛らしい笑顔で「みんな、ありがと~」と挨拶してるのに。 ストレートの朱く染められた長い髪を揺らしたギタリストが、ヴォーカルの肩を抱きながら、彼からマイクを奪って「お前ら、最高っ! またライブにも来てくれよな」と呼びかけてるのに。 私の目は、ステージの左側しか捉えてなかった。 もしかして、彼も一言話してくれるんじゃないかって。 ドキドキしながらステージを見上げてた期待は、見事に裏切られ、 彼はそのまま無言でステージを後にした。 柔らかそうな茶色い髪。 黒のパンツに包まれた長い脚。 大きなアンプに繋がれた黒いベースを軽々と操る腕。 滑らかに音を紡ぎ出す綺麗な指先。 ステージからその姿が消えても、もぉ消せないくらいに、私のココロに焼き付いてた。  
/728ページ

最初のコメントを投稿しよう!