704人が本棚に入れています
本棚に追加
/728ページ
曲が終わって。
くせのある黒髪のヴォーカルが、可愛らしい笑顔で「みんな、ありがと~」と挨拶してるのに。
ストレートの朱く染められた長い髪を揺らしたギタリストが、ヴォーカルの肩を抱きながら、彼からマイクを奪って「お前ら、最高っ! またライブにも来てくれよな」と呼びかけてるのに。
私の目は、ステージの左側しか捉えてなかった。
もしかして、彼も一言話してくれるんじゃないかって。
ドキドキしながらステージを見上げてた期待は、見事に裏切られ、
彼はそのまま無言でステージを後にした。
柔らかそうな茶色い髪。
黒のパンツに包まれた長い脚。
大きなアンプに繋がれた黒いベースを軽々と操る腕。
滑らかに音を紡ぎ出す綺麗な指先。
ステージからその姿が消えても、もぉ消せないくらいに、私のココロに焼き付いてた。
最初のコメントを投稿しよう!