現在、過去、未来

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人生は『過去』の積み重ね。 人は『過去』を思い出しながら生きてる。 溢れる思い出の中、生きてる。 『過去』を大切に思うから『未来』に向かって歩いていけるのかもしれない。 あたしも、過ぎ行く日々の中、立ち止まり、思い出や、心の残像を垣間見るよ。 『現在』の風を頬に受け、 目の前で舞う桜の花弁を眺めるあたしは、 『過去』に頬を撫でた風と、雪のように降る花びらを想い出し喉が熱くなった。 ハラハラと舞い降りる桜吹雪。 残像がスクリーンのように広がる。 どこまでも続く桜舞う丘。 あの時、隣には君がいた。 公園の裏、桜並木。 今、隣には息子がいる。 小さな手を引きながら桜の木を見上げるあたしは『過去』を優しく見つめる。 やっと素直に思い出せるようになったよ。 あんなに意地を張り、何もかもかなぐり捨てた過去なのに……。 『あの物語』が教えてくれたから。 物語の彼が君にそっくりで、仕草や言葉さえも鮮やかに思い出してしまったの。 君はあたしを愛してくれた。 どんなに愛してくれていたかを思い知る。 あたしも……、あたしも君が大好きだった。 とても愛してた。 今になって込み上げる想い。 『来年も桜見に来ような』 背中から抱き締め、耳元にキスをくれた君。 その温もりも愛もいらないと、背中を向けたのはあたし。 わがままでごめんね。 意地っ張りでごめんね。あたしの全てを受け入れて欲しかったから。 どのあたしも本当のあたしだったから。 君には理解して欲しかった。 君だけでも理解して欲しかったんだ。
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