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「カンナ先生……!事務所の机にプリント入れといたから持って帰ってね」
中番(ナカバン)勤務のあたしと交代する亮子先生がとびきりの笑顔で言った。
「はい、有り難うございますって何のプリントですか?」
「あれよ、あれ…、スキー、スノーボード用品セール、毎年あるじゃん、カンナ先生去年行った?」
「行ってませんが…」
「結構良いんだよ、安いの!半額位で買える」
私はそれを聞いて口元が緩んだ。
やったぁ…、今年は買いたいんだよね。
全部バートンで揃えたいんだよね。
板ももう1つバートンで。
ウキウキするあたしの腰の辺りに子供達が絡み付く。
「ごめんごめん、先生もうあがるわ~、ケイちゃん明日続きしよう」
サラサラの髪を何度も撫で顔を覗きこむ。
両手を数人に引っ張られ、ユサユサ腕を揺られながら微笑む。
「明日ね~、ほら、亮子先生が大型紙芝居出してる、座って座って」
パッと亮子先生に目をやる子供達は、素早く紙芝居を見る位置まで走り座った。
興味津々大きな紙芝居を見る後ろ姿に安心してその場を離れ、鞄を持ち事務所に入る。
「お疲れ様です」
先に保育勤務を終え、事務仕事をしている先生達があたしに声をかけた。
「お疲れ様です」
自分の席に座り、引き出しの中を確認する。
あった……これね、これ。
薄いピンクのB5用紙。
古い印刷機でプリントしたのか読み難い黒の文字と写真。
よしよし…、お得じゃん。
ユミを誘って行こう!
そして何かを感じた。
詳しく言えば、セールの日程の文字を見た瞬間に感じた。
○月23日(木)と24日(金)の2日間開催されるらしい。
でも、あたしが何かを感じたのは23日(木)
この文字を見た瞬間、
あたしは知っていた。
誰かと出逢う事。
それも【運命的な出逢い】だと……。
あたし特有の心のアンテナがそう言っていた。
ユミは高校時代からあたしを『超能力少女』と呼ぶ。
何て言えば良いんだろう。
第6感?
予知能力?
まぁ、うまく説明出来ないけど……、
あたしは【普通】より色々ワカル質。
予知しても【まさかね】と流すけど、今回は確信に近かった。
本当に不思議だけど、絶対に出逢うと思っていたんだ。
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