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僕はあの日、織枝と待ち合わせた公園にいた。
ベンチに座り、昨日からの出来事を思い返す。
父ちゃんも兄ちゃんも、織枝も…みんな普通に生活してる。
それを望んでたはずの僕は、何でこんなに淋しいんだろう。
僕だって生きていたら今頃は学校行って、友達と笑って、もしかしたら織枝と付き合ってたかもしれないのに。
そう思うと、心の底からどす黒い感情が沸き起こってきた。
ボクダッテイキテイタカッタ。
ナンデボクハシナナキャイケナカッタンダ。
イキタイ…ニクイ…ミンナガ…。
「このおバカ!目ぇ覚ましな!」
突然降ってきた声の持ち主は、僕の後頭部に思いきり膝蹴りを喰らわした。
恐ろしい痛みに、叫ぶ事もできずベンチにうずくまる。
「目が覚めた?全く…何やってんだか」
不機嫌すぎる天使が、ため息混じりに僕を睨み付けていた。
「何すんだよ!痛ぇじゃん!」
「おだまり!あんたが邪念に飲み込まれそうなのを助けてやったんでしょ!」
邪念?
そういえば僕は、何でここにいるんだろう。
訳が分からなくて、ただ一つ分かる後頭部の痛みを和らげるべくさすった。
「この世に留まる魂はね、必ずそうやって生きてる者を羨むもんなの。あたしが言った事分かったでしょ?」
そういえば、何だかとても淋しくて、悲しくて。
僕はみんなをどこかで責めていた。
気づいてもらえない事に腹を立て普通に過ごすみんなを少し羨ましく思った。
知らぬ間に僕は、みんなを憎らしく思ったいた?
それに気付いた途端、僕は急に怖くなった。
大好きな人達を一瞬でも憎んでしまった、僕の心の醜さが怖かった。
「あたし、初めに聞いたよね?織枝を許せる?って。あんた、何て言ったか覚えてるわね?」
天使のキラは空中で足を組み、のけ反ってでかい態度だ。
こいつが天使だなんて…。
「でも、織枝は特に落ち込んでるようには見えなかったよ」
織枝は楽しそうに、ちゃんと笑っていた。
僕が悲しくなる程に。
うなだれる僕を、キラは呆れたように見下した。
「あんたバカなの?織枝の何を見てたのよ」
「…風呂入ってるとことか?」
「おバカ!何ノゾキなんて卑怯なマネしてんの!そんな事するためにこの世にいる訳じゃないでしょうが!」
この天使は説教ばかりする。
だけどおかげで少し元気が出た。
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