僕、死んじゃいました

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笑いを堪える僕を、女の子が殴り付けた。 グーで。 痛い。 痛みを感じる。 死んでんのに。 キラと名乗った天使の話によると天国へは舟に乗らないと辿り着けないと言う。 死者の魂は舟で三途の川を渡り、天国へ行った後、また新しい命としてこの世に送られるらしい。 一度舟を下りてしまえば、もう二度と天国へは辿り着けないんだと言う。 僕は死んでしまった後、何を思ったかその舟から川に飛び込んだのだとか。 楽しそうに笑いながら。 全く記憶にございません。 天国に行けない魂は、体を持たぬままこの世をさまよい、成仏できずに悪霊へと姿を変える。 人を妬み、羨み、恨む。 除霊された魂は、転生する事もできずに消えて無くなってしまうそうだ。 つまり。 「僕は天国へ行けないって事?」 女の子は深々と頷いた。 「僕は生まれ変われないって?」 女の子は頭が落ちそうな程に首を振った。 何だかにわかには信じられない話だけど、僕はどうやらこのままフワフワしてなきゃらならいみたいだ。 どうせ消えて無くなるなら楽しんだもん勝ちだな。 「んじゃ、僕はこれで」 行く当てはないけど、訳の分からない女の子と一緒にいるのも気が進まない。 「お待ち!最後まで話を聞きなさい!天国に行きたくない訳?」 てくてく歩く僕の首根っこを、女の子が掴んだ。 天使ってこんな乱暴な人だったのか。 ちょっと幻滅…。 僕は乱暴な天使の手を振り払い、背を向けたまま呟いた。 「どうせ死んじゃったんだから、この後どうなろうが知ったこっちゃねぇよ」 僕に未来なんかない。 バカだった友達も、喧嘩ばっかりだった家族とも、織枝とも…もう会えない。 もし生まれ変わっても、それはもう僕じゃない。 死んじゃったら、もうどうしようもないんだ。 「あたしは神様の使いであんたの魂を救いに来てやったの。ありがたく思いなさい」 「へ?僕頼んでないですけど?」 「織枝を助けたくないの?」 その名前に、僕の体が固まった。 恐る恐る振り返ると、天使は不敵に微笑んでいる。 何を企んでいるのか分からないが織枝の事となれば話は別だ。 「織枝に会えんの?」 僕はあの日、織枝と待ち合わせしていたんだ。 大好きな織枝と…。
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