Prologue

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    ――夜の、廃工場街。 それは、風化した壁が崩れ、隙間から鉄筋が顔を覗かせている寂れた空間。 電気など通わない、廃棄された街。もちろん、街灯などはない。 薄蒼白い月明かり以外に、その空間を照らす灯りなどなかった。 そんな場所で、睨み合い対峙する二つのグループ。 一つは『Nebula』、もう一つは『Moon』と名乗る、それぞれ十数人からなるグループチームだ。 「わざわざ呼び出しに応じてやったんだ。さっさとやり合おうぜ」 気怠げな声音で言うのは『Nebula』総長。 彼の特徴は、薄暗い中でも目立つ、紅の長髪。目元を覆うように、ダークレッドのバイザーをかけており、両の眼がどこを見ているのか、読めない。 「無論だ。そのために呼び出したのだから」 対する『Moon』総長は楽しげに応えた。 こちらは、相対するように素顔を晒していた。特徴は右目が蒼いオッドアイと、色素が薄い髪。メタルフレームの眼鏡の奥で、蒼い眼が光っている。 彼らは互いに薄い笑みを浮かべながら対峙し、かつ静かに睨み合う。 二人の間は広く開いているにもかかわらず、それが気にならない程の気迫に満ちた対峙だった。 彼らは今、どちらが最強かを決めようとしているのだ。 チーム間に、緊張感が充ちていく。 ジャリ…… 靴裏が土砂利を踏みしめ、微かな音を立てる。静寂を破り、先に動いたのは『Moon』総長だった。 先駆ける彼の後ろに、雄叫びを上げてメンバーが続く。   「おいおい……ちょいと堪え性がないんじゃねーのか、蒼月(そうづき)さんよ!」 『Nebula』の総長は、不敵に笑っては髪を掻きあげ、背後に控える者達に指示を下す。   「行くぞお前ら、遠慮なく暴れてやんな!」   言うや否や、彼も走り出した。 後に続いて走り出した『Nebula』のメンバー達も、相手に負けじと雄叫びを上げる。  
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