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怖れていた 大切な人がいなくなること、大切な人が死ぬこと 何も失いたくなくて 何も壊して欲しくなくて 私は独りになった 自分の中の大切なものがなくなるのが怖くて 独りなら何も失わないと安心したくて 自分を守りたくて… だけど君は現れた 君は独りの私に手を伸ばした 素直じゃない私はそれを拒んだ 自分を守りたくて、この理不尽な世界に振り回されるのが嫌で でも君はそんな私を温かく握った それが何度も続いて、私は何度も拒んだ 君に私は嫌われるような事を何度もしたと思う 君を泣かせた事もあった それでも君は私の傍にいた 何度でも、いつでも いつからか私は君を拒まなくなっていた 君もいつからか前のようには激しく接して来ないようになっていた ただそんな日常がいつまでも続いて… だけど、この理不尽な世界は君を拒絶した 衰弱してベットに横たわる君はいつもよりも細かった 君の傍らで私は震える心を押さえるので必死で 何も言えなくなった君はただ私を見ていた いつの間にか君は私の右手を握っていた その手は冷たいけれど、優しかった 気付いた私が君を見ると君は微笑んだ 私は両手で君の手を握った 君は嬉しそうに目を閉じた その日、君は病室から姿を消してしまった それから、私は君に手紙を書いた ただ一言の言葉を添えて、紙飛行機にした それを飛ばそうと思ったが、出来なかった それは今でも私の机の中にある 机の中にあるたくさんの紙飛行機の一つ 独りじゃない その一言の紙飛行機
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