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なんと落ち着く音であろうか。隣に座る女性の発する寝息、即ち唇音。大嫌いな満員電車の中に出来た癒しのオアシス。実に暖かい音。
永遠にこれが続かないか。永遠にその唇音を私にだけ響かせてはくれないか。
そんなことを考えている矢先、その女性が目覚め、彼女を見つめていた私は少し焦った。
しかし女性は何も言わずそのままおとなしく座っていた。
実に残念だ。もう聞けないのであろうか。私には彼女に声を掛けることが出来ない。そのような勇気など私は持ち合わせていないのだ。
電車を降りると先程の女性が自分を追いかけてやって来た。
なんと彼女の方から私に声を掛けて来たのだ。先程彼女を見つめていた私の顔が良かったのだとか。
こうして私達はこの夜結ばれた。
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