嘘つき

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 何処までも続く白い大地と白い空が広がっていた。  俺の上空で、幾百幾千幾万の俺が宙で踊る。  喜び。怒り。哀しみ。楽しみ。懐古。後悔。希望。絶望。その全てが俺自身であり、その全てが俺を貫き、砕き、完膚無きまでに破壊して、そして最後は見向きもせずに通り過ぎていく。  通り過ぎた跡には過去があった。  愚かしくも懐かしい、もう二度と触れる事の出来ない、かつての俺が。  記憶の一端に触れようとした俺の手は届かず、ただ空白の空を掻き乱すのみ。  俺の手から逃れた過去の俺は、上空で旋回し、俺を見下して嘲笑ってた。
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