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視線の先にあるあの扉。
鍵はかかっていないのだろうか?
そんなことを不意に思い、
扉に近寄りノブを捻った。
ドアノブはあっさりと回転し、その後、
扉は軽く軋む音を立てながら開く。
……鍵はかかっていなかった。
部屋に閉じ込めようとした訳では
ないようだ。
扉の向こうには
磨き上げられたように
綺麗な黒い床と幾つかの扉。
そして広間。
広間すら黒に染められて
いるのはなんとも。
この場所の主人は何を考え
黒に染め上げたのか……。
私はそんな違和感とも言える
不快感のようなものを覚えながらも
廊下の扉へ意思を向ける。
左側の壁にある手近な扉を
開いてみようかと
ドアノブに手を伸ばしてみたが
それはびくとも動かない。
ならばと一つ奥の扉に駆け寄り
そのドアノブを捻ると
軽やかな感覚と共にすんなりと
扉は開いた。
部屋の中、正面には1m程の鏡が
置かれており
その他大したものはないように思える。
強いて言うならばそこにある
身長の丈はあるであろう金色の大剣
は一際目を引いた。
しかしその他には
重要なものはなさそうであった。
私はその部屋を出て先ほどの扉から
見て右側、今の扉から見た時
正面にあたる扉を開いてみる。
……扉の向こうは壁。
何かの冗談なのだろうか。
扉を開くとそこに黒が広がる。
一瞬構えたがそれはただの壁
であることに気付き、力を抜く。
この館の主人は何を思って
このように作ったのか。
考えは尽きない。
――先程の扉を開いてから
数十分は経っただろうか。
今私は先ほどの階の
一つ下の階層に居た。
広間に階段があったのである。
此処も同じく黒尽くし、
構造はほぼ同じのように思える。
広場には石像が置かれているのだが。
それは不気味な程生々しい女体や
男体の石像であった。
正直に言えばおぞましい。
石像の目が私を射抜こうとしている
のではないかと思えた。
あまりの不気味さに私は廊下へと
駆け寄ったのである。
駆け寄ったというより逃げ出したと
言う方が正しくも思えるが。
兎も角、私は石像に恐怖を覚え
廊下へと進んだのである。
――しかしだ。
そこの右手にあった扉を開くと
私は吸い寄せられるように
部屋の奥へと進んでしまった。
体の突然の移動に驚き、
そして恐怖した。
扉は激しい音と共に閉まったのだった。
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