第一矢 一応ハンターのリリ?

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「あ、リリさんいいところに来てくれました。あのですね、実は今から砂漠に行って調査してきてくれませんか? もうこの村のハンターが色々やっちゃいまして」  扉を開けばリリを見つけた受付嬢がこちらに向かって駆け寄ってきた。周りを見ればやけに多くのハンターが談笑しながら盃をかわしている。……確かにこの小さな村ではこれぐらいの珍事も珍しいのだろう。 「お願いしますよ~。他のハンターも笑うばっかりで全然行ってくれる気配がなくて、もうリリさんだけが頼りの綱なんですよ」 「んん……えっと」  行くつもりはあったのだが、流石にこの雰囲気で「はい、受注します」とは答えにくい。きっとそんな空気が蔓延してるからこその受付嬢の叫びなのだろう。 「ってか、こういうのこそ『一応ハンター』の出番だろうが。ほらほら、ギルドに顔を売るチャンスだぞ」  躊躇するリリだが、ある意味では思わぬ形で助け舟が入った。  それに対して小さくちろりと抗議の目を向けた後、口を開こうとしたリリだったが、 「もう、そんな意地悪しちゃ可哀そうじゃない。そもそもどんな危険物質が垂れ流されてるのか分からないのよ? へんなチャチャブーとかへんなメラルーとかへんなランゴスタとかいたらどうするのよ!」  正しい意味の助け船が入ってしまった。本気で心配しているのかその女性ハンターが立ち上がると行かせないとばかりにリリに抱きついてきた。  自分にはない膨らみでアップアップと溺れながらなんとか脱出すれば、ちろちろとこちらをうかがっている受付嬢のところに行って受ける旨を伝える。 「ほんとですか~♪ ありがとうございますリリさん」  今度はこちら側で溺れそうになるが手早く書類に名前と登録ハンター番号を記帳すれば、心配そうにこちらを見ているハンターに頭を下げて、そのまま集会所から出ていったのだった。
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