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振り返ったリリの目の前にいたのは一人の若い男性だった。
もっともその視線には怒気どころか敵意に殺気まで込められており、リリを怯ませるには充分だった。
「ひっ!?」
いや、正しく言えばそれは正しくない。早々に父親と死別した彼女であり、あまり他の男性ハンターとも関わりのなかったからこんな近くで詰められるのには慣れていない。
いや、それでも語弊があるだろう。鮮やかな翡翠色の髪の毛を大胆に流した容姿、キリリと柳眉が整っており、見るものを吸い込ませるような黒曜石のごとき瞳、無駄なものがなく、引き締まったカラダ、あるいはその低いヴォイスに驚いたのかもしれない。
「おいテメエ、聞いてんのか、あぁん?」
「~~~~っ!?」
見知らぬ男性が一歩リリに近づけばその分だけ彼女は一歩下がる。そうすれば間合いを詰めたい彼はまた前にでる。
こんないたちごっこは彼女が片足を水に浸けるまで続いたのだった。
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