82人が本棚に入れています
本棚に追加
「……んん」
少女が小さく伸びをしながら身体を起こせばすでに空は暗く陽が落ち切っていた。寝すぎたかなと思いながらベッドから降りればお腹から小さく自己主張する音に気がついた。
「……そういえば、まだこんがり肉が残ってた」
明かりの零れるキッチンを見ながら、足をそちらに向けることなくポーチから大きな骨付きの肉の塊を取り出す。すでに冷えて固まったそれにナイフを入れて口にしやすいサイズに刻めば、おなじように水筒も出して口につけた。
一人きりの夕餉を明かり一つ灯らない部屋で済ませればそのまま浴場に向かう。風呂釜の中の液体は薪をくべていないために冷たい水のままであり、それにも慣れたようにタオルをひたせば身体の汚れを手慣れた手つきで事務的に拭う。
「……もう寝よ」
リリは思う、明日も明後日も…きっと一年後だって今日と代わり映えのない一日を過ごすのだろう…と。
最初のコメントを投稿しよう!