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「つまらん…あまりにもつまらん。」
長く、腰まである赤い髪を風に靡かせ。
金色の瞳を鋭く光らせた男が
ぽつり。と、呟いた。
だが。男は人にして人ではない。
本来丸みを帯びている筈の耳は尖り。
口端からは白い牙が覗く。
爪は異様に太く、長く、鋭い。
また。背腰辺りからは黒く、
先が三角形になっている…不可思議な尻尾が垂れていた。
そんな男の周りには様々な死体が転がっており、
男はそれを踏みつけながら…また言葉を溢した。
「珍しく、このサタンに意見するから
どの位やるかと思えば…
この様に脆く、貧弱とは…
まるで人間ではないか。
…同族と思いたくもない。」
男…サタンは失望という溜め息を深くつき、
―グシャッ…!
ある死体の頭部を踏み潰した。
「…ふん。興ざめだ。
…これ以上ここに留まるのは無駄だな。」
サタンはそう呟くと、
背中から蝙蝠のような翼を広げ。
―バサッ…
飛び立った。
「ふむ…この際だ。
この魔界だけでなく、今や断絶されし
人間界をも手中に納めるのもまた一興…
…ククククク…さて、
人間界は楽しめるだろうか…」
サタンはそう言うと、
そのまま ある場所へと向かった。
サタンが向かった場所。それは1つの洞窟。
いや…洞窟の中にある家だった。
サタンは家の前に立つと乱暴に扉を叩き。
「おい、ベルフェゴール!!
さっさと出てこい!」
と、大声で言った。
しかし、扉が開く気配は無かった。
―ブチッ…。
サタンから、何かの切れる音がした。
サタンは右手を扉に翳すと、何かを呟き始めた。
「…《深淵の闇よ、我の命にしたが―」
―バンッ。
サタンが呟いていると、扉が勢いよく開き。
中から小学2年生程の少年が出てきた。
少年は短い、薄い緑色の髪に。
眠そうにたるんだ紅い目をしている。
「なぁに…サタン。
僕まだ眠いんだけど。」
少年は眠そうに左手で目を擦り、
仁王立ちしているサタンを睨むように見た。
「ベルフェゴール。
お前はいつでも寝ているだろうが、
…と、そんな事はどうでもいい。」
サタンはベルフェゴールと
呼んだ少年の両の肩を掴み。
「ベルフェゴールよ。
お前に作ってもらいたい物がある!」
そう言ったサタンの顔は
とても楽しそうで…残忍な笑顔だった。
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