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「そーだ、今平気ですか?」
「ん?うん、大丈夫だよ。」
キッチンを覗くと、流依さんだけで。
今日余ったケーキのことを聞けるのは流依さんだけだった。
「タルトとかって…余ってますか?」
「タルト?…ちょっと待ってて。」
「あ、はい。」
店内はシーンとしていて、テーブルや椅子が淋しげに置かれていた。
昼間とは全然違う光景に、私は少しの違和感を覚える。
それも気のせいなのだが、私は昼間の方がなんとなく好き。
明るい太陽の光が入ってきていて、楽しそうに談笑している人たち。
落ち着いた雰囲気で本を読みながら静かにお茶を楽しむ人たち。
それぞれ楽しみ方は違うけど、そういう人たちを見るのが好きだ。
「お待たせ、雅。」
「あ、いえいえ。全然。」
しばらく店内を見回していると、甘い匂いと共に流依さんが現れる。
「20分待ってくれる?」
「え?」
「今、タルトの生地焼けたんだ。これから試作品つくるからさ、食べてよ。」
何を言い出すのかと思えば…、今日の余りとかでいいんだけど…。
「え、でも…」
「あぁ、お金はいらないよ。試作品1つじゃないし、寮のみんなにも持ってって。」
私が戸惑っていると、更に気が引けることを言う流依さん。
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