542人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしたんですか?流依さん。」
「…いや…、雅が、泣きそうだったから。」
運び忘れた料理でもあったか、と思っていた私は、流依さんの言葉にポカーンとしてしまった。
理由はそれだけ?っていうのと、気づかれていたんだ、っていう恥ずかしさが顔を赤らめさせる。
そんな私を見て、流依さんは私の頭をポンと撫でてくれる。
なんだか笑顔がこみ上げてきて、私は控えめに笑った。
「ほら、これでも食え。」
そう言って流依さんが差し出してきたのはシフォンケーキ。
「え、いいんですか?」
「いいよ。今お客さん少ないし、さっさと食べちゃいな。」
「あ、ありがとうございます。」
キッチンの出入り口近くに置いてある椅子に座り、柔らかいシフォンケーキを食べる。
「…おいしい…。」
「だろ?」
見ていたのか、流依さんは私の言葉にそう言って笑った。
その笑顔があまりにも眩しくて、思わず私も笑っていた。
最初のコメントを投稿しよう!