錆びれゆく街

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フィルは稲妻のライオンの女子寮に向かって走っていた。 稲妻のライオンは、百人以上の傭兵を抱える大きなギルドだ。本部である地上三階地下一階の建物はホームと一応呼ばれてはいるが、住んでいるのは実力者ばかり十人と、もう働けなくなった年寄りが六人だけだった。 ホームは一階が酒場兼、集会場兼、クエストの申し込み場だ。二階と三階は居住区で、三階の一番大きな部屋にはジウスが住んでいる。地下一階は食糧と武器がしまってあった。 ホーム以外に、男子寮が二つと女子寮が一つある。ギルドのメンバーのほとんどが寮に住んでおり、フィルの恋人であるティーレもそうだった。 ちなみに、稲妻のライオン最強と謳われるフィルは勿論ホームに住んでいるし、突撃隊長とあだ名を付けられているタイラーも、ライオンの頭脳と呼ばれるマティエもホームに住んでいた。 フィルが女子寮の前まで来ると、寮の入り口の大きな扉が開いて、鮮やかな赤がフィルに向かって飛び込んで来た。 「ティーレ!飛び付いて来るな。びっくりするじゃないか」 「仕方ないでしょ?私は昨日まで実家に帰ってて、あんたに会ったのは二週間ぶりなんだから」 ティーレは豊かな赤毛を揺らしながら、頬をプウッと膨らませた。 「それとも、私には会いたくなかったとか?」 「そんなことはないさ!俺だって会いたかった」 フィルが微笑むと、ティーレは嬉しそうに笑った。
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