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次の日、フィルは日の出と共に目が覚めた。ベッドの脇には、着替えや剣など旅に必要なものが積んである。フィルは剣を持って、磨き残しがないか鞘から抜いた。
フィルの剣は、バスターソードと片手でも両手でも使える剣だ。力ではなく技で戦うフィルには、これが一番戦いやすかった。
フィルは磨き残しがないのを確認して、静かに剣を鞘に収めた。
「行くか」
フィルは荷物を担いで、剣を腰に差した。部屋を見回して、片付いているか確認して、フィルは胸元を掴んだ。
「いってきます」
フィルは扉を開けて、タイラーを起こしに行った。
タイラーの部屋はいつも滅茶苦茶だ。服は散らかり放題だし、食べ残しがたくさん落ちている。
フィルは顔をしかめながら、足の踏み場のない部屋を歩き、タイラーがくるまっている汚い毛布をおもいっきり引っ張った。
「ぬあっ!」
妙な声を上げて、タイラーはベッドから落ちた。
「おはよう」
「痛い」
タイラーは頭を抱えながら、フィルを睨み付けた。
「他に起こし方ないのか?」
「他の起こし方でお前が起きるもんか。それより、今日の準備は出来てるんだろうな?」
タイラーはゴホゴホと、わざとらしく咳をした。
「へぇ、また出来てないんだな?」
「ご、ごめんなさい」
「ごめんなさいで済むかぁああ!」
フィルの罵声がホームに響いた。
「俺はお前に、何回も何回も準備はしとけって言ったよな?クエストがある度に、いつも言っているよな?
それに何だ!?こないだ部屋を片付けてやったよな?床がピカピカになるまで磨いて、服もきれいに整頓してやったのに……殺されてぇのか?」
骨をボキボキ鳴らして、フィルは般若のような形相になっていた。
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