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「では、出発するぞ!」
長が声を上げると、三つの荷馬車と二つの空の馬車が動き出した。
傭兵達は、その馬車の周りを囲んで歩き出す。フィル達三人は、そのしんがりを歩くことにした。
フィルは前を歩く傭兵達の背中を見て、この旅は楽そうだなと思っていた。
この隊商の傭兵達は、みんなかなりの実力者だ。フィルは全員と顔見知りで、誰がどれだけ戦えるか知っていた。
先頭を歩くドレインはレイピアの使い手で、フィルとも対等に渡りあえるし、真ん中で、空の馬車に腰掛けたり、歩いたりを繰り返しているヨサックは、老練の剣士で、流石に体力はなかったが、長年の経験を生かし敵を翻弄する。彼のことはマティエも秘かに尊敬していたりする。その他も、通り名を持っていたりする実力者揃いだ。名のある盗賊だって、このメンバーを見れば逃げ出すだろう。
フィルは空を見上げながら、報酬でティーレに何を買おうかと考えていた。ペンダントがいいか、それともイヤリングか。護身用に携帯出来るような、装飾が施された短剣なんてどうだろう。
フィルはそんなことを考えながら、通り過ぎて行く街の様子をぼんやりと見ていた。
フィルがいるギルド―――稲妻のライオンがあるリアメリアは、昔は交易の中継地として栄えた街だった。
ところが、リエルが王になるとライドリン全体の治安が悪くなり、交易に対する税が重くなったのもあって、急速に錆びれて行った。
交易が錆びれると同時に、リアメリアには傭兵ギルドが増えていった。それは、治安が悪くなったせいで盗賊が増え、それらから荷物を守る為に、傭兵が重用されるようになったからである。
ギルドの中には、盗賊とさほど変わらないギルドもあるのが現状だが、それは仕方のないことだった。
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