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旅は、フィルが予想通り楽なものになった。香辛料は高く売れる為、盗賊に狙われやすい。次々に襲い掛かってくる盗賊達を、フィルら傭兵は力を合わせて撃退した。
昔は、盗賊も少しは道理をわきまえた行動をしていたと、ヨサックがぼやいていたことがあった。盗賊に道理なんてあるもんか、とフィルが言うと、ヨサックは幼い子供に言い聞かせるように言った。
「まあまあ、お若いの。盗賊だって人間じゃ。優しい心だってあろうさ。道理のわかる盗賊は、子供や弱っている者、貧乏な者はほっておく。中には、貧乏人にほどこしをしてた者もいたのう」
フィルはその話を全部信じた訳ではないが、今の盗賊がおかしいのはフィルも何となくはわかっていた。
おかしいのは盗賊だけではない。人も、街も、ライドリン全体がおかしくなってきていた。
ソラリアの街に着くと、長は早速香辛料を売りに行き、傭兵達はほとんどが自由行動を許された。
フィルはマティエとタイラーを引き連れて、ティーレへのお土産を探しに行った。
フィルの中で一番心引かれた、豪華な装飾がされた短剣はマティエに一笑され、二番目に心引かれた大きな石の指輪は、心理的にも現実的にも重いだろと、タイラーに上手く否定された。フィルはタイラーにさりげなく回し蹴りを決め、結局、羽根をモチーフにしたネックレスを買った。
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