錆びれゆく街

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「リエルはエマヌストロの傀儡(かいらい)だ。今に、ライドリンは滅びちまう」 男の一人が吐き捨てるように言った。すると、もう一人は呆れたような声を上げた。 「だから、民衆を率いて反乱を起こそうってか?気持ちはわかるが、一体誰が民衆を率いるっていうんだい?」 「わからないか?リエル以外にいるじゃないか。誰よりも王座に相応しい方が―――」 「まさか!?アリオン王子のことか?」 一方の男が慌てた様子でシーと言った。 「声がでかい。勿論そうさ。王子以外に誰がいると言うんだ」 「しかし、王子は死んだと聞いたが……?」 「いや、それは嘘だ。確かな情報なんだが、王子は城から逃げて今もどこかに生きている。アリオン王子は生きているのさ。我々は今、王子を必死に探しているんだ」 フィルは突然立ち上がった。胸がざわめく。知らぬまに握り締めていた拳を開いてから、フィルはタイラーに言った。 「そろそろ、マティエを布団に放り投げるぞ」 「ええ゛!まだ飲み足りねぇよ」 「それ以上飲んだら二日酔いになるぞ。ほら、そっち持て」 フィルは無表情でマティエの右腕を抱えた。ブスッとした顔をして、タイラーがマティエの左腕を抱える。後ろから、まだ飲めと声を掛けられたが、フィルは手を振ってそれを断った。 二人はマティエを引きずりながら、三階の寝床を目指した。三人は同じ部屋を与えられている。 明日の朝、マティエの足はアザだらけだろうなと、どうでもいいことを考えていたが、フィルの頭から、さっきの男の言葉は離れてくれなかった。
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