錆びれゆく街

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次の日、フィルは腹部に激痛を感じて目が覚めた。 「ぐぇっ!」 思わず蛙が潰れたような声を上げて、フィルはバッと目を見開いた。 「おはよう」 目の前にいたのは、満面の笑みを浮かべたマティエだ。マティエは拳を握り締めていて、フィルは腹部の痛みの原因をすぐ理解した。 「お、おはようございます」 フィルはとりあえず、殴られたことに触れてはいけないと思った。 マティエがフィルを殴ったのは、昨日、マティエ引きずりながら階段を登ったせいで、マティエの足がアザだらけになり、アザの理由をすぐさま理解したマティエが、お礼代わりにしたのだろう。 起きてみれば、タイラーはまだ幸せそうに眠っている。マティエはニッコリ笑ったまま、タイラーのベッドの脇に立った。フィルは、タイラーが悲鳴を上げて起きる様子を、腹を擦りながら見ていた。 朝御飯が済む頃には、マティエの機嫌もかなりよくなっていた。マティエは怒らせると怖い。フィルの方が強くはあるが、マティエは賢い。本気になれば、ずる賢い手で報復される。マティエを本気で怒らせることは、命の危険を意味する。タイラーは、怒らせなくてもマティエによく遊ばれるが……。 ともかく、その日はフィルもタイラーも大人しくしていた。
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