錆びれゆく街

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「ぅぁぁあああ!!」 フィルはベッドの上で飛び起きた。 「……夢、か?」 「そうでーす」 気の抜けた声が、フィルの問いに答えた。 フィルが声振り向くと、ベッド脇の椅子に、同じギルドの仲間のマティエとタイラーがいた。 「何で、お前らがここにいんの?ここ一応、俺の部屋なんだけど?」 「そんなこと知ってる。俺達は、お前にこれを見せようとしただけだ」 マティエは長い髪を揺らしながら、一枚の紙をフィルに見せた。 フィルは紙に顔を近付けて、紙の内容を読み上げた。 「隊商の護衛求む。腕が立ち、丈夫な者。年齢はとわず、性別は男。報酬は……三十万コン―――マジで!?」 「マジマジ!なぁ、フィルもやるだろ?こんないいクエスト、なかなかないぜ!」 タイラーがフィルの腕を引っ張った。 フィルはうーんと唸りながら、もう一度紙を見た。この報酬額は、かなり引かれる。しかし、甘い話には裏がある。フィルは悩みながら、ふと、依頼人の名前を見つけた。 「パルマ香辛料会社、か。それで、気前が良いんだな」 パルマ香辛料会社とは、フィルが住んでいるライドリン国で一番大きな会社だ。基本的には香辛料を扱っているが、その他多数の物を扱い、ライドリン王より財産を持っているという噂さえある大企業だ。
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