錆びれゆく街

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「ジウス、何で挨拶に行かなきゃならねぇんだ?」 「相手はパルマだよ。しかも、これだけの報酬をくれるっていうんだから、礼儀正しくするのが当たり前だろう?それから、あたしはマリアだ」 「わかったよ、ジ・ウ・ス!」 わざと一言一言を区切ってから、フィルは酒場を飛び出した。 「お待ち!フィグネル・シモン!!」 フィルの背中に、ジウスの叫びが追い掛けて来たが、フィルは逃げるが勝ちとばかりにそのまま走り続けた。 ギルドが見えなくなる場所に来ると、フィルは後ろを振り返った。 そこには、予想通り、息を切らして走るタイラーと、涼しい顔をして長い髪を風になびかせるマティエが走って来た。 「お疲れ様!」 「お疲れ様!じゃねぇ!!怪物を怒らせて行くんじゃねぇよ!」 タイラーがフィルの肩をガタガタ揺すった。 「怖いんだよ!帰ったら、絶対マリアさんにお前らも同罪だっ!って、怒られるに決まってる」 タイラーは頭を抱えた。ジウスは今でこそアレだが、一昔は名の知られた傭兵だったらしい。ジウスの怪力で抱き締められれば、骨の二三本は折れかねない。 マティエはタイラーの肩を叩くと、優しく言った。 「大丈夫だ。俺とフィルは逃げるから、タイラーだけが抱き締めの刑だ」 「大丈夫じゃねぇじゃん!てか、俺生け贄!?」 「「その通りだ」」 フィルとマティエは親指を立てて、タイラーに笑い掛けた。 「てめぇらぁぁあああ!!」 タイラーの絶叫が虚しく空に響いた。
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