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その後、三人はきちんと挨拶に行き、嫌々ながらギルドに帰った。
フィルがギルドの入り口の酒場に顔だけ出すと、ジウスがレースをフリフリさせながら、苛立った様子で酒をぐびぐび飲んでいた。
「怪物は、酒を飲んでいるであります!」
兵隊風に敬礼をして、フィルは木の影に隠れている二人に言った。
「ご苦労だったな、フィグネル中尉」
マティエは真面目な顔をして、敬礼を返した。
「いえいえ。それで、マティエ大佐どうされますか?」
マティエは考えるふりをして、さも、今思い付いたようにタイラーに向かって言った。
「よし、タイラー軍曹。突撃せよ!」
「アイサー!って、何でだ!?やっぱり生け贄じゃねぇか!?」
タイラーは隠れていることも忘れて、大きな声で叫んだ。
「マスターマリア、逃亡兵の三人がここに隠れてますよ!」
どこからか、告げ口する声が聞こえた。それが合図だったように、フィルとマティエは駆け出した。
「幸運を祈る、タイラー軍曹!」
「死ぬなよ」
「裏切り者ぉぉ!」
タイラー悲痛な叫びが追い掛けてくる。タイラーは三人の内で一番足が遅いので、捕まるのはタイラーと決まっている。それはいつものことで、二人は心の中でタイラーに合掌しながら別の方向に走り出した。
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