序章「空戦にて」

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「サイレント、チェックシックス!」 自分の同僚が警告し、自分は後方を確認する。 データリンクによって表示されているレーダーには反応がない。 だが、IRST(全周囲の赤外線探知装置)には反応がある。 ということは〝あれ〟の可能性がある。 「ボギー、シックスオクロック。回避! 回避!」 後方にいたのは共産圏のステルス戦闘機MIG28(架空機)多用途戦闘機。 同じく共産圏のMIG29フルクラムと似たボディとは裏腹にMIG29を遥かに凌駕した戦闘機であった。 正確にはMIG37だが、映画トップガンに登場する架空の戦闘機であるMIG28を捩(もじ)って、パイロットの間からはMIG28と呼ばれている。 「MIG28だ、畜生! トップガンでも見てる気分だ!」 自分は思わず、そう言った。 相手はトップガンに登場するMIG28を捩った戦闘機だからだというのは言うまでもない。 「余計な事、言ってないでブレイクしろ! ロックされているぞ!」 ジョージが後席で喚き散らしているのが聞こえる。 「了解、ブレイク!」 自分は再度、ブレイクする。 激しいGが体にかかり、座席に押し付けられる。 自分は激しいGに耐えながらバックミラーにて後方を確認した。 ――畜生、まだついて来ている! 自分は未だに食らいついて来るMIG28を見て悪態をついた。 それは当然といえば当然だ。 理由は簡単。 こちらは大型の戦闘機で機体が重く、MIG28は小型の戦闘機で軽量だからだ。 そのため、旋回半径に差が存在する。 その差は格闘戦(ドッグファイト)においては非常に大きな差であった。
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